story

どうして活版印刷を始めたの?とよくご質問いただきます。
無我夢中で覚えていない、が正しいのですが、ちょっと考察。

私は自分のアイデアを形にする術と楽しさを知ったのはファッションの世界でした。

アイデアを紙にデザイン画として描いて、ハトロン紙に定規と鉛筆でパターンを引き、トワルで形を出して、綺麗な布をハサミで裁断してミシンやアイロンで仕上げていく。とりわけデザイン画を書くことが好きで、当時のデザイン画は今でも大切にあります。

何も知らない私が8年前にグラフィックの世界に入った時は、既に写植の時代が終わっていて、手を動かさなくても形になること、4色のインクで色を自在に操れるすごい時代。頭の中のイメージを形にするもう一つの方法を知って興奮していました。初めから一流のホテルやレストランのグラフィックに携わることができ、クオリティの高い印刷物が形になっていく様を手に取ってみることが出来たのはとても良い経験で、存在感がある印刷物を見ることができたのはかなり影響を受けていると思います。

近年の不況と格安印刷の存在で、今まで作っていた印刷物は少しずつ様子が変わって来ました。クオリティより早く、安く。色校正も、紙を選ぶことも、インク色を選ぶことも金額が高いのです。だからしょうがない、と思う反面、もやもやしてました。

そんな時に、初めて“Letterpress”を知り、少ない数でも自分で好きな紙を選べて、インクを混ぜて自分で色を作れる。こんなに嬉しい事はありませんでした。

活版印刷は私が印刷に対して思う『足りないもの』を補ってくれる気がしています。それは、ファッションから教えてもらった「形にすること」に少し近いところがあるからかもしれないな、と今、書いてて気づいて、妙に腑に落ちています。

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2010年1月に手元にきた印刷機。
はじめは南青山の倉庫に置いて作業していました。

 

自然光がたっぷり入る倉庫は冬でも暖かく作業するにはぴったりの場所でした。

(雨の日と、夕方以降はとてつもなく寒かった)

何度も失敗しながら、少しずつ調整をして
仕上がっていく印刷物が並んで行く様が嬉しくて
にやにやしながら作業していたのを覚えています。

夏になったら日中は暑くて作業できないねーなんて言っていた矢先に、あの大きな地震。家があった同じ建物の3Fは古いビルなこともあり、棚が崩れたりPCが割れたり、東京では珍しいくらいに持ち物が壊れました。1Fにあった印刷機は無事でしたが、建物自体を取り壊すことになったので、引越が続いてなかなか印刷を再開できる環境が整わずに印刷もストップ。
ようやく落ち着いて制作ができるので、
わずかながら手で覚えた感覚を取り戻しつつ、
活字を組んでみたいし、活版印刷独特の風合いを活かして
カードやウェディングの招待状などを作っていこうと思います。
ゆっくりですが、お付き合いいただければ幸いです◎